随想リレー2012 「耐寒登山の思い出」 野田 暢子先生

 『耐寒登山』は昭和52年(1977年)2月に始まった。1年間の姫路東高等学校御国野校舎を経て、『別所町北宿』の地で姫路別所高等学校がスタートした年である。

 まだ在校生は1年生と2年生だけだったが、生徒も先生も気合いが入っていた。スキーや山登りを特技としている先生が何人もいた。 生徒会の執行部も中心になって生徒行事を盛り上げていた。校舎の北側に迫るあの美しい岩尾根を踏んでみたいと思う人が多かった。 話がまとまるのは早かった。 寒さに震える2月にあの播磨富士と呼ばれる信仰の山「高御位山(タカミクラヤマ、標高304m)」から播磨アルプスを岩尾根伝いに歩いて、姫路別所高等学校を目下に眺めながら鹿島神社を目指すコースをベストと考えた。

実際には、学校→旧天川中学校→JR曽根駅→旧山陽道→鹿島神社参道→墓地公園→長尾→高御位山→鹿島山頂、ここまでは男女一緒。 このあとは、男子はとんび岳→日吉神社→学校のコースで、15㎞(内、山5km)。女子は、百間岩→鹿島公園→学校で、10km(内、山3.5㎞)。 できるだけ長い距離を歩き身体を鍛えたいと考えた。生徒会執行部が先導した。

まず、長尾からの岩場の登り。いきなり汗だくとなる。岩場の途中で一息入れると、目の前に播磨灘が広がっていた。 高御位山の山頂には巨大な岩盤がドーンとある。

かつて、神が鎮座する磐座(いわくら)として人々の信仰を集めたものである。

ここから西に向かい、アップダウンを繰り返す尾根道を巡る。 南側には市街地、その向こうに瀬戸内海と淡路島、北側には連なる山並みと見事な展望が開ける。 鹿島山頂から女子コースの百間岩を下るのがまた面白い。スリル満点。少しでも気を抜くと滑り落ちそうになる。毎日学校から見上げるあの大きな岩場だ。

 ずいぶんとしんどい行事だし、もうやっていないと思い込んでいた。 しかし、今も伝統行事として引き継がれていることを知って感激した。 何回かは悪天候等のために中止されているが35年間も続けられてきた。このページの写真は今年(2011年度)の耐寒登山のものである。

 初めて姫路別所高等学校を訪れる人は、その立地条件の見事さと校庭の美しさに目を奪われる。 迫ってくる背後の山は圧倒的だ。山に自分の存在をゆだね、池に心の平安を得る。この地に学ぶ幸せである。

 今回この原稿を書くにあたって、壷坂昭夫、田中章愛、森川清美、山口隆義の各先生方にお世話になりました。ありがとうございました。

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